平泉の旅

なぜかそこに心惹かれるものがあった。
岩手県平泉。
特に理由も無く、ただ、今年はそこへ行ってみたいと思っていた。
なんでだろう。
毎日をただ忙しく感じ、その原因が分からないまま、また毎日を過ごしているここ数日。
春は、いろんな事を考え始める季節だった。


4月30日。
あらかじめ決めてあった東京行き。
その目的は、大学時代の後輩と待ち合わせのため。
今年のゴールデンウィークは、ずっと思っていた平泉へ行くことと決めていた。
ただ、一人でそこまで行くほどの勇気も無く、他に誘える人もなく、学校の後輩に声を掛けた。
彼は快く返事をしてくれた。

腰の重い僕に代わってホテルの予約もしてくれた。
誘いの言葉を書けたのは僕だったのに、ワガママを聞いてくれて本当に嬉しい。
たとえ自分で決めた事であっても、いろんな決め事や、やらなくてはいけないことを作るのが億劫だった。
そんなワガママを聞いてくれたのがありがたかった。

家を出発するのは14:00ごろの予定。
この日のために大きなバッグを"カメラのキタムラ長野桐原店"で買っていた。
通い詰めたカメラのキタムラで迷いに迷ってバッグを買った。
買うことを迷っていた店内では、相当に大きなリュックに見えて、本当にその大きさが必要なのか、とても長い時間を費やしたのに、荷物をつめてみると実は大きくも無い事に気がつく。

所詮、内容量27L。
中に入るのは意外に少ない。
思いつく限りの荷物を持ち、なんとなくソワソワしながらも、予定していた時間通りに家を出発して、長野駅まで車で行く事に決めた。

「あ・・・」
銀行へ寄るのを忘れて途中まで来てしまった。
「万全の用意をして東京へ行く」って思っていたのに。

突然思い出したので進路変更。
銀行へ行かなくては。
分かりきっている事だけど、赤い日に挟まれた銀行は混んでいる。
閉店時間15:00ギリギリに滑り込むことに成功。
まだシャッターは開いている。
それにしても思いのほか混んでいるのだ。
駐車場に車を停めるのも苦労だった。
おじさんが手際よく誘導してくれたから良かったけれど、あの混み方は尋常ではない。
ATM前の長蛇の列をじっくり消化して、残り少ないお金を補給することに成功した。
「良かった良かった」って気がつけば、15:00にはまだ余裕がある。
すでに終わってしまっていた通帳もついでに補給することにした。
窓口が閉まる15時にはまだ時間がある。
シャッターのカラカラ音を横にしばらく待ち、ギリギリ補給完了。

ようやくすっきり長野駅へ向かうことができると意気込んで銀行を出たけれど、長野市内もやっぱり混んでいる。
いろんな道が渋滞中。
家を出るときは、まだ早いような気がしていたが、実際に到着してみるとそうでもない。むしろ遅いかもしれない。
会社で使っている駐車場に車を停めて、大きなリュックを担いで、駅までのルートを歩く。
大きな荷物とシッカリした格好で歩くのは、なんだかちょっとカッコいい感じがした。

長野駅構内に着き、まずは新幹線の時間をチェック。
5分後に出発する新幹線がある、「どーしよ・・・」
迷わず見送って次の新幹線に乗ることに決めた。
余裕を持って乗りたかったのだ。
切符の買い方も知らないのだ。
何をどうしたら良いのかすら分からない。
自動券売機が目に付いた。
「東京はどこで降りたら良いんだろう?」
待ち合わせる後輩は、両国に住んでいるのだそうだ。
そこへはどうやって到達すれば良いのか全く分からない。
とりあえず教えられた上野駅だ。
東京まで行ってもどうせ迷うだろうな。

長野-上野間は7260円。
なんとか初めての券売機で買うことができた切符をポケットに突っ込んで、ホームへ向かうことにした。
頭の上の電光掲示板には、まだ15:53発の東京行きが映っている。
「結構、 余裕があったのかも。」
なんて思いつつ、売店で500円の時刻表を買ってホームへ。
「あれ?」
下で駅員さんが、どこかのオジサンと指をさしている。
見上げる姿が僕を指しているように見える。
また「あれ?」って大きな声。
なんだ?なんだ??って振り向くとメガネのオニーサンがドカドカ階段を下りてきた。
「ヤツか?ヤツを待っていたのか?」
って気が付けば、余裕で新幹線に乗れそうだった。。。
意外と時間に余裕があったことを知って、乗っていれば良かったと思ったけど、乗らない。
次の東京行きは30分後。
その間にベンチに座り、時刻表を広げて地図を確認。
分かない。。。東京の地理。
地図を見ても分からないってどういうことだ?
キヨスクで売っている時刻表の地図は見づらいことが判明した。
こんな時には聞いてみるのが一番なので、知っていそうな人に片っ端からメールして質問しまくる。
お相手くださった皆さま、ありがとー。
とってもよく分かった。

気がつくと、次の新幹線待ちの人たちも増えてきた。
遅れをとらないように、禁煙自由席の列へ早速陣取り、2番目の場所を確保してひと安心。
そんなことを思っている間にも、後ろには着々と夫婦連れから親子連れ、家族連れが増えて行く。
やっぱりみんな、見るからに行楽しているんだ。
5月のぽかぽか陽気に浮かれて、どこかへ旅立つ季節なんだ。

隣で待っているオネーサンがとってもキレイ。
参った参った。
胸元で揺れてるトルコ石のペンダントが涼しげだ。
しばらくオネーサンを気にしていると、待っている間じゅう、その場でしきりに回転している。
ヒマヒマなのは分かるけど回り過ぎだ。
キレイなオネーサンがクルクル回って、それをちらちら見ていると、それはそれで結構楽しかったりする。
残念ながら、 オネーサンは車内では遠くの座席に座ってしまい、それっきりになってしまった。
東京までの2時間近い間、連休前に社長から渡された本を読む。
小難しくてワケの分からん本。
何となくそれを読み進みつつ、お相手を願ったメールのお返事。
相手をしてくれた方々ありがとー。
18:10頃。
ようやく上野着。
大きな荷物を抱えているので、ちょっと早めに席を立つ。
隣のおじさん、立つ時にヒモをプラプラさせてゴメンよ。
重い重いリュックを抱えて、通路をよたよたしながら、デッキで揺られてた。

デッキに出ると、近くで小さいオジサンが、ハンバーガーをかじっている。
そのハンバーガーが妙に臭う。
顔は絶対的にアジア系なのに、その雰囲気はなんとなくアメリカっぽい。
強烈な臭いが気になりつつも、あのオネーサンを探してみると、上野ではまだ降りないらしい。
長野駅でクルクルしていたオネーサン。
まーいーか。
間もなく上野駅に着いた。
意外とたくさんの人が降りる。
僕は、2番目に下車。
振り返って見ると、オネーサンも続いて降りてきた。
あとをついていってみよう。
長いエスカレーターを一つ、二つ上り、もらったメールの中から、次はどこへ行けば良いのかを探る。
待ち合わせをしているのは両国。
大学時代の後輩と待ち合わせだ。
およそ2年振りで久しぶり。
もらった情報で、上野から両国までへ行くには、まず秋葉原へ行かないといけないそうだ。
それには 山手線か京浜東北線に乗る必要があるらしい。
どっちが良い?
気がつけば頭上に大きな看板が出てる!
なんて優しいんだ!!
しかも、オネーサンも看板に従って歩いていくように見える・・・
ついていけば良いのか?
でっかいリュックを担いで、オネーサンを追っかけ歩く。
なんか目印みたいなナビゲーターができて便利。
怪しいけど・・・
人ごみの中を夢中になって追っかけてると、左側に京浜東北線の文字が見えた。
危うくオネーサンに夢中になって、見逃すところだった。
気がついて良かった。
雑踏の中、遠くの方へ去ってゆくオネーサンを名残惜しく思いつつ、エスカレーターを駆け上がるとすぐ、左側にホームがあった。
待たずに電車が来る。
とっても便利。
アメ横が窓の下に見える。
上野の次の駅、御徒町が近すぎる。
車掌さんのアナウンスが終わらないうちに着く。
アナウンスなんてどうでも良いような気もしてきた。
あっという間に秋葉原に着いてしまった。
早いことは良いことだ。
乗り換えに緊張。
次は総武線に乗らなくては。。。
総武線で2番目?の駅が両国のはず。
例によって看板を見ながら歩く。
矢印通りに進むと総武線はすぐに見つかった。
黄色い電車。
銀色に見えるけど、黄色のラインだから良いんだろうな。
車内はチョット混んでいる。
これは、東京では空いているほうなのかな。
いろんな人にぶつかりながら、デカイ荷物で「申し訳ない」と乗車。
アナウンスによると、次は御茶ノ水。
路線図を確認。
ん?おかしい・・・逆じゃない?
どうやら、逆向きの電車に乗ってしまったらしい。
今乗っているのは、違うほうへ行ってしまうらしい。
焦る。
慌てて平然と御茶ノ水下車。
降りたはイイけど、ココからどうしたら良い?
今のホームは逆方向だったし。
向かいのホームは橙色だし。
黄色・・・
線路を挟んだ反対側に見える。
階段を上って降りたところ。
ちょうど電車が来た。
さっき通った秋葉原を過ぎ、あっという間に両国。
18:25くらいだった。

昔、もんじゃを食べに来て、この駅の前の道を歩いたことを思い出した。。
見覚えのある風景が懐かしい。
後輩は仕事を終えているだろうか。
待ち合わせはどこなのだろう?
とりあえず、江戸東京博物館の方へ行ってみることにした。
見覚えのある景色が懐かしい。
それを横目にスタスタ歩いて適当に散歩をしていたら電話が来た。
夜8:00くらいになるらしい。
仕事だから仕方ない。

時間になって何度も連絡をもらった。
あちこち散歩していたけれど、まったく地名も場所も分からず、
ちょっと手こずったけど、なんとか東口で会うことができた。
久しぶりにみる後輩。
細いなー。
今日のお宿、後輩宅へ連れられてゆく。
特にすることもなくテレビとともに時間が過ぎてゆく。
風呂は近くの"にこにこ入浴"という暖簾の銭湯。
サザエさんにも出てきそうな趣のある銭湯。
そういう場所へ行った事がないので、少し楽しみでもあった。
高い天井、キレイに掃除されているのに古くボロイ感じの屋内。
まさしくそこは銭湯。
下町の生活感にあふれた場所だ。
ぶら下がったチェーンを引く手動の水洗トイレも、ゴムひもの湿ったロッカーのカギも、何もかもが雰囲気を感じさせる。
その日、僕の就寝時間は12:30頃だった。

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